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「まいぷれ上田・東御」取材レポート

信州匠の時計修理士 3級養成講習会(第5回目)、(最終講習会)

上田市の「信州の名工」 一之瀬公さんが「信州 匠の時計修理士養成講習会」の講師

信州匠の時計修理士とは

 今やクオーツ時計が登場して以来、機械式腕時計は少なくなってしまい、それに伴い修理技能士も少なくなってしまいました。

そんな中、“長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合”によって技術・技能の継承を図る取組みが平成16年から始まりました。 同年に長野県が 創設した「技能評価認定制度」第1号となり、機械時計の機能・構造・分解掃除・故障修理・ 時間調整等に関する知識技能の講習会を受け、技能評価試験の合格者に与えられる称号が“信州 匠の時計修理士”です。

 “信州 匠の時計修理士”は1級・2級・3級と特級(A級+1級)・A級(精密時間調整課題)の等級があります。1/1000mmから1/100mmの精度が求められる技能試験は相当に難しく、“信州 匠の時計修理士3級”でも“国家認定1級時計修理技能士”よりも難易度が高いと言われていています。


厚生労働省「地域いいもの」に掲載

 平成29年に厚生労働省より委託している中央職業能力協会で選定している「地域発!いいもの」に信州匠の修理士制度ものづくり産業振興技能者育成等に資する特色ある取組や制度として選定されました。

 そして平成31年1月には「地域発いいもの好事例集」に掲載されました。

「信州 匠の時計修理士」は、長野県の「技能評価認定制度」における認定を受けた機械式
腕時計の修理士の資格です。この資格は、人気が高まっている機械式腕時計に関する技術の向
上と、長野県における高度な時計修理に関する技能の継承を目的に発案され、平成16年度から
長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合の主催で、セイコーエプソン株式会社、シチズン時計マニュ
ファクチャリング株式会社の協力のもとに、「高度な機械式ウォッチの修理技術を持つ技術者を
認定し、技術の普及と技能継承を図るもの」として行われています。


長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合より

上田市の“信州の名工”一之瀬公さんのご紹介


◆一之瀬公(いちのせただし)さん

 上田市中央にある時計屋さん“ヨロズヤ時計電気有限会社”(以後“ヨロズヤ”)を営まれている代表取締役社長です。

 一之瀬社長は「信州 匠の時計修理士1級」、「国家認定1級時計修理技能士」、「時計修理 ものづくりマイスター」、「職業訓練指導員(時計科)」などを取得されていて、平成27年度に「信州の名工」(卓越技能者知事表彰)の時計修理工として表彰されています。

一之瀬社長は“長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合”の理事も務められ“信州匠の時計修理士講習”では講師も務められるなど、次世代育成に貢献されています。

また、“信州 匠の時計修理士”の認定証授与式では司会もされています。 

◆“ヨロズヤ”さんの詳しい情報はこちら

一之瀬公さん

講義をする様子

信州 匠の時計修理士養成講習 

今回も一之瀬さんが受け持っている信州匠の時計修理士講習3級養成講習を取材させて頂きました。

この講習は長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合が主催している「信州 匠の時計修理士認定」を取得することを目的としてその知識と技術を身に付けるための講習です。

講習はA級が全6回、1・2級と3級が全12回講習があり、茅野市総合サービス(旧 茅野高等職業訓練校)で学科と実習が行われています。

茅野市総合サービス(旧 茅野高等職業訓練校)

講習が行われてる時計教室

この講習会は、機械式時計の修理に関する技能・知識の継承を目的に、「信州匠の時計修理士 」(長野県技能評価認定制度の機械式腕時計修理技能資格)の取得を目指しています。
また、講習会の講師は、長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合・セイコーエプソン株式会社・シチズン時計マニュファクチャリング株式会社(順不同)から時計修理士資格を有する者が務めます。


長野県時計宝飾眼鏡商業協同組合 ホームページより

令和元年6月26日 「信州 匠の時計修理士養成講習」(第5回)の講習会

6月26日の講習は座学で基本的な知識を身に付け、検定要件に必要な大きく分けて給油、分解、調整、組立の技術を身に付けます。

ここで必要とされる感覚に1/100mmの差を目視で捉える能力が必要とされます。

その差を見極めて時計がどのような状態かを判断することが要求されます。これも匠の要素です。

 

講義をする一之瀬さん

講習会の様子




実技研修中の研修生の皆さん

を支える講師の方々(第5回)

講習は2回ごと2日間に続けて行われます。講師の方々もその単位で受け持っています。

この回は一之瀬さんを主として、青柳隆行(あおやぎたかゆき)さん[特級取得者]と監物初美(けんもつはつみ)さん[1級取得者]の3名の講師で講習が行われました。

研修生を教える青柳隆行さん

研修生を教える監物初美さん

青柳隆行さん

監物初美さん

令和元年9月18日 「信州 匠の時計修理士養成講習」知識と技術の締め括る講習会(第11回)

前回取材させて頂いたのは6月26日(第5回)のこと、それから約3ヶ月経った9月18日、19日の講習会は最終でこの2日間は3級試験に挑むための締めくくりとして行われました。

この日は全12回のうち、第11回目の講習で試験課題に対してのまとめのの講習会の講習でした。

一之瀬さんを中心に講師の方々は受講者8名に対して講師陣は4名ついて細やかな指導がされていました。

※講習会それぞれ奇数会と偶数会が連日で行われます。今回は第11回と第12回のうち11回を取材させて頂きました

要点を研修生に伝える一之瀬さん

研修中の様子

選りすぐりの講師の皆さん

今回の講師陣は一之瀬公(いちのせただし)さんをはじめ、腕時計のケースやガラスなどの外装をされていた小澤伸明(おざわのぶあき)さん、シチズン時計マニュファクチャリング株式会社の上沼大地(かみぬまだいち)さん、時計店を経営されている宮下浩(みやしたひろし)さん、時計メーカーで日本を代表する高級、高精度の時計を製造する重要なポジションで活躍されていたり、活躍されているなど、日本の機械式腕時計の第一人者の方々でした。

講師の皆さん写真左から)一之瀬公さん、小澤伸明さん、上沼大地さん、宮下浩さん

機械式時計の部品や機工を少しご紹介

機械式腕時計は一般的なもので約130点ほどの部品からできています。中には約740点もの部品を使った時計もあるそうです。

この約130点の部品を正確な動きをするように異常を検出し、調整したりチューニングする事が時計修理士に求められる要件です。

特に個々の機械部分の部品は非常に小さく精密に作られています。



写真のピンセットで掴んでいるものは軸受に使われている人工ルビーです。

回転部分などで金属同士が触れると摩耗が大きく進みます。そこで軸受け部分にルビーなどの硬い石を磨き上げ、抵抗を少なくすることで軸などの金属部分の摩耗を低減させます。

よく機械式腕時計では“何石”とありますが、これは軸受金属と触れる部分(アングルのツメ石)などに使われている石の数を言っています。

軸受の人工ルビーをピンセットで掴む様子

機械式腕時計の心臓部テンプのお話し

機械式腕時計の時間を刻む重要な部品にテンプという部品があります。
テンプは大きく分けて「天輪」(外側の輪)、「天輪アーム」、「天真」(中心の軸)、「ヒゲゼンマイ」があり、他にいろいろと細かい部品がついて形作られています。

中でも「ヒゲゼンマイ」はテンプの命です。
この「ヒゲゼンマイ」の厚さは約3.5/100mm(髪の毛の太さくらい)の部品で両端が固定され、時計によって多少違いますが、1秒間に数回(2.5回~5回程度)伸縮を繰り返し、テンプを左右に振幅運動させて時間を刻んでいきます。

この「ヒゲゼンマイ」の巻かれている隙間が等間隔で無かったりすると偏心(中心から偏っていること)して振幅運動してしまい、時計の精度が落ちる状態、つまり時間の遅れや進みが起きます。またテンプが水平でない場合も精度が落ちます。

ヒゲゼンマイ

テンプに付いたヒゲゼンマイ

テンプに付いたヒゲゼンマイの拡大写真

機械式腕時計の中で最も小さな部品の一つにヒゲゼンマイの外側をテンププレートに固定するためのクサビがあります。

長さは約1.1mm、直径は約0.15mmという小ささ、0.5mmのシャープペンシルの芯の約1/3以下という細さです。

このクサビも調整や交換の際には外したり、付けたりします。ヒゲゼンマイは髪の毛ほどで軟らかいためこのクサビを打つ際にヒゲゼンマイが歪んだり変形してしまうことが多く、難しい作業だそうです。

袋の片隅にあるピン

クサビの拡大写真

腕時計を組み上げる

歯車はケースの中に何層にもなりながら腕時計は完成しています。

限られた厚さの中でそれぞれの歯車や機工はそれぞれが触れないように2/100ほどの隙間で組み込まれています。締め付けすぎたり、緩すぎると正確に動きません。調整しながら正しく組み上げることも3級では要求されます。

機械式腕時計

腕時計の時間を調整

時計が組み上がると最終の調整に振り角の調整があります。

ヒゲゼンマイが伸縮を繰り返し、テンプが左右に振幅運動をしますが、左、右それぞれ基準では250度振られます。左右のバランスが悪いことを「片振り」といいます。また、狂いがあると左右のバラツキ、振り角の違いなどで時間が正確に刻めなくなります。角度が大きければ大きいほど歩度(日差)も少なくなります。

 

腕時計測定器振動数振り角片振りなどを測定し、調整します。

3級では歩度調整で日差±0~10秒以内の誤差を基準に判定されるそうです。

 

腕時計測定器で計測し、調整している様子

工具の調整

3級の課題には使用する工具を整えることも要求されます。

例として拡大した写真の下側にあるのはわざわざマイナスドライバーの先を削り落としてあります。このドライバーを元のように当たり面をまっすぐにし、先端の厚みを整え、使用できるように整えます。

匠の時計修理士は自分で使う工具のメンテナンスもできなければなりません。

写真上)正常なマイナスドライバー

写真下)先が削られたマイナスドライバー

マイナスドライバーの賛嘆部分の拡大写真

“信州 匠の時計修理士”の試験までの予定

この後、令和元年10月2日、3日に模擬試験が行われ、いよいよ令和元年11月22日、23日に認定試験が行われます。見事に認定試験 い合格された方は認定証授与式で認定書が渡されることとなります。

この研修会の皆さんが認定されますように影ながら応援させて頂きます。

平成30年度“信州 匠の時計修理士” 認定証授与式の様子

 平成30年12月12日(水)茅野市にあるマリオローヤル会館で“第15回 信州 匠の時計修理士認定証授与式”の様子です。特級認定者:1名、A級認定者:1名、1級認定者:該当者無し、2級認定者:8名、3級認定者:10名の計20名の方々が合格認定されました。

 

「信州 匠の時計修理士」に興味がある方はこちらをご覧下さい!

司会をする一之瀬社長

会場の様子

授与式での記念撮影

ヨロズヤ

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上田の町と共に60年以上の時を刻んできた時計屋です!

上田市中央1-3-6

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